ストレリチア秘話No.133 ストレリチアの植え替え 「秘 伝」第1巻

 「秘伝」とは、大げさな表現ですが、植え替えを、どうしたらいいか、困っている人は多くいますから、満更、的外れでもないか、と思っています。栽培経験60年を超える私でも、時には失敗することもあるのですから、ゆるがせには出来ない問題です。

 以前、少し株分けについて書いたことがありましたが、実は、植え替え、株分けでは技術上の事柄は、大事なことであっても、それは二次的な問題なのです。基本は「季節を選ぶ」ことにあるのです。これを間違えたら、どんなに優れた技術をもってしても悪い結果しか生まれません。

 最も適した季節は5月から6月で、4月は、やや早いものの、まあ、なんとか許されるでしょう。7月は技術上はできても、花芽の出る季節に株に手を加えるのは良いことと言えません。一番、悪い季節は秋で、次いで冬も良くありません。真夏は、腐りが入る危険がありますから避けた方が賢明です。ただし、これは株分けの場合であって、根を傷つけない植え替えは、殆ど季節を選びません。

 では、なぜ、こういえるのでしょうか。ストレリチアは植え替えで水が吸えなくなってしおれた葉は二度と元へ戻ることはありません。早く次の葉に生長してもらい交代しなければならないのです。5月、6月は生長が始まった最適の季節なのです。反対に秋は、来年までの長い期間、耐えなければなりません。この消耗に耐えられないことが起きてしまうのです。

 また、真夏がよくないのは生長の真っ盛りだからです。お客さんが毎日、大勢押しかけてきているのに店の模様替えをする店主などいません。このように、ストレリチアにとって季節は、それぞれ、果たす役割があるのです。栽培は、これに従わなくてはなりません。『秘伝』とは、手品のようなものでなく、ストレリチアの望むことを忠実に果たすこと、といえましょう。