ストレリチア秘話No.200 ストレリチアの種子の寿命

 花の種子の寿命は種(しゅ)によって異なり、全部が同じわけではありません。日本で発見された「縄文ハス」やエジプトでの「小麦」の種子のように、何千年も発芽機能を失わなかったものがある一方で、「とりまき」といって、種子が熟したら、直ぐに播かないと発芽しなくなってしまうものまであって様々です。ストレリチアはどうでしょうか。

 30年近く前、私は、ケープ州、ブラックヒルのジャンセア自生地を訪れた際、地主である農家の主人に「ジャンセアの種子」を持っていると、告げられ、喜んで買い取ることにしました。種子は二万粒で、価格は日本円にして二万円だったと覚えています。そうそう売れることのなかったジャンセア種子が売れたので嬉しかったのでしょう、ワインを一本持ってきてサービスにつけてくれました。

 日本に帰ってきて、早速、種子を播きました。大切な種子ですから、万全の措置で播いたにも拘わらず、結果は無残で、発芽したのは、わずか15本の苗だけでした。原因を考えてみると、種子が古くて発芽能力を失っていたとしか考えられません。しかし、売り手の方も、そのことを知っていたわけではないでしょう。世の中では、こんなことは数多く起きていることでしょう。やはり、知識がないとお互い間違いを起こしやすいのです。このことは私に大切なことを教えてくれました。そこでストレリチアの種子の寿命を研究してみたのです。

 ストレリチア種子の発芽率は採取直後がもっとも高く、その後、時間が経つにつれ低下してゆきますが、1年以内なら許容範囲内です。それを、過ぎると、どんどん低下してしまいます。困るのは発芽適温の季節に会わせなければならないことですが、1年あるなら、いくらでもチャンスはあります。

 こんな苦労の末に生まれたのが我が家のジャンセアの「ご先祖様」ですが、数多くの子孫を生み出しているですから、損どころか利益を得ているといってもよいでしょう。