ストレリチア秘話No.486 ストレリチアらしさを生かす大株仕立て

 ストレリチアの栽培と一口でいうものの、その表れ方は様々です。玄関やベランダに並べる鉢物として。あるいは、狭い室内でも十分に置ける矮性種のコレクション。庭園の植栽のメンバーとして、などなど、人、それぞれです。また、扱い方にも、その人の個性が表われます。やたら、株分けして数を殖やして喜ぶ人もいれば、株をいじることなどしないで大株仕立てに専念する人もいます。ストレリチアそのもの、の選び方にも好みが表われます。堂々とした大柄好みの人もいれば、コンパクトでなければいやだ、と言う人もいます。質についても、安ければ他の条件はどうでもよい人もいれば、世界に一つしかないお宝でないと満足出来ないマニアといえそうな特殊な人までの広がりがあります。

 どれがよくて、どれが悪いというものではありません。その人の好みに合わせて楽しめば良いのです。目指すのは、どうしたら、ストレリチアの良さが引き出せるかにあるでしょう。

 その典型的な例を挙げるとすれば、お手本は自生地のストレリチアの姿です。何百年、いや何千年も経た、その風格は歴史を感じさせてくれています。長生き、こそがストレリチアらしさを表わしてくれるのです。

 ポートエリザベスの名所、小高い丘の「ドンキン リザーブ」には、昔、使われた小さな灯台の近くに、ジャンセアの特大株が植えられていました。これが、この公園の名物の一つだったのです。このジャンセアは、あきれるほどの大株で、仮に掘り上げて株分けしたら、軽く、40~50株は出来そうなくらいに育っていました。さすが、ジャンセアの自生地を控えたポートエリベス、という雰囲気が感じられたものでした。出会った最初の感激が過ぎて、しばらくすると、そのジャンセアの持つ欠点が見えてきたのです。今は冬でストレリチアの開花シーズンなのに、花が一本もついていません。つまり、花立ちの悪い株だったのです。

 私が最後に訪れたのは 2001年で、その時は、すでに姿を消していました。公園を管理する人たちも,花が出ないに困って処分したのだと思います。灯台が出来たのは開拓の初期の頃でしょうから二百年は軽く過ぎているはずです。ジャンセアが、いつ植えられたかはわかりませんが、百年以上も前は確かでしょう。それなのに消えてしまったのは本当に残念なことです。でも、このことは、ストレリチアを扱う上の心構えを教えてくれているのではないでしょうか。何百年も生きる植物を植えるには、それに耐え得る品質を備えたものでなければならないということを、です。

ストレリチアを選ぶには、

1, 花立ちがよいこと

2,草姿がよい

3,花が美しい

 この3点が揃っていることが望まれます。それどころか、何十年以上もかける大株仕立てでは、良いどころか、必須の条件だとさえいえるのです。間違って手に入れた株を後から手直しするることは不可能なんですから。地植えだけでなく、鉢植えだって同じことです。

 優秀花を扱うことが、どれほど大切かを身にしみて感じた出来ごとでした。