ストレリチアには、まだ解明されていない謎がいくつもありますが、その一つに『花粉がどのように雄しべから雌しべへ運ばれるのか』も、その一つです。サンバードがやってくれている、までは分かっても、それがどのように、どんな道筋で行われているか、が分かっていないのです。毎日のようにサンバードがやっていることなのに、です。
南アフリカの或る植物関係者が書いていました。
「ストレリチアの授粉は、なかなか成功しない。でも、それでいいのだ。ストレリチアは長生きの植物だから、そんなに頻繁に子孫を殖やさなくて良いのだから」
と。自然での受粉率は、あまり高くないらしいのです。
さて、観察に戻りましょう。サンバードの動きは目まぐるしく、早くて、どこをどうしているのか、簡単にはわからないのです。そこでストレリチアの花の構造を見てみましょう。鳥の一番の目当ては蜜ですから、その在りかは花弁の根元にあります。花粉はその先にあるのですが、押して開かないと顔を出しません。サンバードの足が、その上に乗ったときに露出するのです。そして嘴が蜜の壺に差し込まれます。花粉はサンバードの体のどの部分に付着するのでしょうか、足か、羽毛か、嘴か?これが分からないのです。ストレリチアは自家受粉を嫌いますから、飛び立って次の花に辿り着いた時、その花の花弁の先端にある雌しべに、どうやって花粉が付着するのでしょうか。雌しべは粘着性があって、わずかな量の花粉で十分です。しかし、この作業は、蜜を吸うのに何の関わりもありません。つまり、サンバードにとっては何の意味も、理由もありません。必ず、やらなければならないことではありませんから、なにかの拍子に付着する、ことかもしれないのです。
とにかく、分からないいことだらけ、なのです。
*人工授粉は簡単です。筆で花粉を採って雌しべに付けるだけです。