ストレリチア秘話No.144 植物も情報交換(コミュニケート)する? その1

 これは高度な学術上のテーマですので、素人がやたらに口を挟むべきことでは無いことは承知しています。しかし、仕事上に関わりが出てきますので、やむを得ず首を突っ込むことにしました。

 私はストレリチアの育種家として、毎年のように種を播き、苗を養成しています。6号鉢に培養土を入れて育てるのですが、その数は、少ない年でも10鉢を超えます。趣味でする一鉢、二鉢と違って、育ちの差がはっきりとわかるのです。

 発芽の速さが鉢によって違うのです。条件は揃えてあるはずなのに、です。同じ大きさの鉢、同じ培養土、同じ水やり、同じ置き場なのに。種子も無作為に混ぜ合わせてありますから、どの鉢も同じような種子の集まりと考えて良いでしょう。

 ストレリチアの種子は播種後1ヶ月で発芽を開始し、その後、1ヶ月、次々に続きます。もっと遅れるのもありますが、こちらは少数派です。この1ヶ月の間に、鉢によって発芽の早い、遅いの差が表れるのです。この差が半月もあるのさえ出てきます。早い鉢では、次々と芽が、顔を出しているのに、遅い鉢の方は全然、変化がありません。種子が腐ってしまったのでは、心配していると、ある日、突然、一斉にワッと発芽してくるのです。

 このことは早くから気づいていたのですが、忙しさに取り紛れ、大した問題とは思っていませんでした。なにしろ、出方がどうあろうとも苗が出来れば良かったのですから。それが今年、2022年、暇を持て余す境遇となり、また、ジャンセア黄色系の育成に熱が入ったこともあって、苗の発芽の様子を余裕を持って観察するようになったのです。