ストレリチア秘話No.165 ストレリチア栽培家の最大関心事は? その2

 ストレリチアの花芽形成の指令は「DNA」から、と述べてきましたが、このことに、もっと深入りしてみましょう。但し、学術的には、まだ解明されてはいませんので、以下は事実としてではなく、まだ、「ものがたり」として受け取って頂きたいと思います。

 指令を発する「独裁者」がいるわけではなく、DNA遺伝子は集団として行動している、とみるのが、より正確なのではないでしょうか。つまり、花芽に関してだけでも、推進派だけでなく、

「まあ、待て待て、急ぐでない、生命の安全を考えたら、花に養分消耗するのは早すぎる」

とブレーキをかける一派もいるのではないでしょうか。この両派のせめぎ合いの結果、推進派の方の力が勝っていたために「花芽形成を開始せよ」となるのが、花立良好の株です。反対に、慎重派の勢力が強いのが、花立ちの悪い株、ということになります。

 これに手を加えるのが育種家です。自分の望む形質を持った系統を作出するために親株を選び、交配し、苗を養成し、その中から、基準に合ったものを選び、合わない物は捨て去ります。しかし、この作業は簡単には進みません。木材や金属の加工、組み立てと違っ

て、いくら、良い物同士を組み合わせても、遺伝子同士の相性や、可能性の違いもあって、なかなか、思う通りにはなってくれないことが多いのです。そのために方法は、「ライフルではなく、ショットガン」つまり、一発ではなく、弾幕で捉えることになります。

 結果として、思い通りを通り越して、思わぬものも生まれてくることもあります。こんなことが起きるのは、そうそう、あるわけではありませんが、これも喜びの一つです。