ストレリチア秘話No.176 ストレリチアの可能性を拓(ひら)く その2

 ストレリチア矮性種を発見した経緯です。初めから「矮性種」を作出しようとの考えなどはなく、後から見直したら「矮性種」だった、ということなので、「養成」ではなく、「発見」なのです。

 20年も前になりましょうか、ジャンセアの苗、約千本を育てました。その中の1%、基準を緩めれば3%、つまり、10本から30本ぐらいが、どうにも育ちが遅いのです。初めの頃は、何かの原因で遅れているのだろう、その内、追いついてくるに違いない、と、気にも止めていませんでした。しかし、何年たっても様子は変わりません。そこで今度は、「これは奇形だ、いじけているのだ」と思うようになりました。

 そうこうしている内に、1株から花が出てきたのです。小さくて、可愛い花です。そこで、やっと気がついたのです。

「これは育ちが遅れたわけではない、元々、小柄な性質だったんだ。しかも、決して奇形なんかじゃない、正常だったんだ」

と、改めて「ストレリチア 矮性種」として認めることにしたのです。

 これが誕生の経過なのですが、まだ、一般には知られていません。知っているのは3~4人ぐらいでしょうか、とにかくストレリチアは情報の伝達が遅いのです。私は、ようやく

「異端」から脱しましたが、一般には、まだ、存在すら知られていないのが現状です。

 以下は、これから矮性種を手がけてみようとされる方への助言です。元々、ストレリチア栽培の壁は、ストレリチアと人間の時間感覚の差にあります。レギーネよりもジャンセア、ジャンセアよりも矮性種と「ゆっくり」の差が大きくなるのです。簡単にいえば、

「焦れったい!待っていられない!」にあります。この解決には、他のストレリチアと一緒に育てることです。気が向いた時だけ相手にするのなら、なんとか、この「ゆっくりさ」に付き合うことが出来るでしょう。