「この世で、最も手に負えない強情な生き物、向きを変えさせるのが最も困難な生き物は、一定の習慣に一度固まってしまった植物である」
これは1906年、アメリカの園芸雑誌「センチュリー・マガジン」誌にバーバンクが述べた言葉です。これは、なにやらストレリチアを指しているかのように受け取れるのは私の僻みでしょうか。でも、これは植物全般がもっている性質なのですから、特定の植物を指しているわけではありません。それでも多くの数の中には、移住先の土地の気候になじんで、生き方を多少、変化させる植物もありますから、なんとも難しいテーマと言えましょう。
ストレリチアは自生地、南アフリカを離れて世界各地に散って、どこの地域でも同じように立派に生育しています。それでも移住先の気候に合わせている様子は無く、どこでも同じような姿で育っているのです。このことは、持って生まれた性質が、元々、たいていの土地の気候に合うものだった、と考えて良いのではないでしょうか。なにしろストレリチアは頑固な植物で人間のいうことなど一切、聞いてくれないのですから。
この点が如何に有り難いことであったか、身にしみて感じたことがありました。ストレリチアと同じ東ケープ州産の植物で「プロテア」という低木があります。実に魅力的な花なので何回となく挑戦してみたのですが、全部、失敗に終わってしまいました。種子を発芽させることはできるのですが、苗が我が国の夏の高温には耐えられなかったのです。冬の寒さに弱いのなら、いくらでも対策が立てられます。しかし、夏の蒸し暑さにはお手上げでした。
昼間の高温はともかく、夜の暑さは自生地とは段違いだったのです。
圃場の冷房は室内の比ではありません。ストレリチアと同じ気候の地域の産だから、と気軽に考えたのがそもそもの間違いでした。プロテアが頑固に身につけた性質が他の地域には合わなかったのです。