ある町に50年間、何ら変えること無く栽培を続けているストレリチア農家があります。他にもあることでしょうから例の一つであることでしょう。そこのストレリチアは古い品種で花の見栄えが悪く、花立ちも少ないので収益は低いだろうと思うのですが、何年たっても栽培を止めるようすはありません。実はストレリチアには大きな取柄があるからなのです。それは一度、植えてしまえば、後は殆ど手がかからないことなのです。ここも普段は手をかけているようすはなく、冬になればビニールを張り、保温をするだけで、後は花を採るだけの仕事です。花の品質から見て、普通以下の価格でしか売れていないでしょうから、この農家は決して喜んで続けているわけではないはずです。それでも止めるに止められず、ずるずると続けているのではないでしょうか。
もう一軒、栽培を放棄してしまった農家があります。花立ちが悪くて割に合わなくなってしまったのでしょう。ところが栽培をやめてしまっても、ストレリチアは相変わらず生き続けているのです。処分するには重機を必要としますから経費の点で引き延ばしているのでしょう。ストレリチアは丈夫な植物ですから、始末するにも簡単なことではありません。
趣味の世界でも似たようなことが起きています。品質がよくないために持ち主が飽きて面倒をみなくなっても、ストレリチアは生きているのを見かけることがあります。つまり、ストレリチアは積極的に捨てない限りは生き残ってしまうのです。私は、これはストレリチアの持つ魔力の一つではないかと思っています。私たちは、うっかりすると、この魔力に絡め取られてしまい、どうにも動きが取れなくしまうのです。特に「ゆっくり、のんびり」のストレリチアに似たペースの人はかかりやすく、私のような「せっかち人種」は抵抗力があるようです。