ストレリチア秘話No.189 ストレリチア 花芽形成のメカニズム

 ストレリチアの栽培で花がよく出てくれるか、どうかは大問題です。期待以上にわっと咲いてくれて大喜びすることもあれば、何年たっても咲いてくれない株に腹立たしい思いを抱くこともあります。

 現代の生物学の知見によりますと、花芽の形成には二つのルートがあるらしいのです。一つは、外の環境の影響を受けて反応を開始することですが、前にも述べたように、日光、温度、肥料、その他、あらゆる条件を変えてもストレリチアは反応してくれませんでしたので、これは有効な手段とはいえないでしょう。

 もう一つは、植物が自主的に行動を開始して花を咲かせるルートです。つまり、DNAの指令に従って動くことです。これには花芽を作りなさいと命令する遺伝子と「まだ、まだ」とブレーキをかける遺伝子とがあって、この両者の力関係で決まるのではないか、と言う説です。ただし、まだ、実際にどうなっているのかまでは分かっていません。

 この綱引きの結果で花立ちが決まるとしても、これは植物内部の事柄で外からの応援は難しいことでしょう。ことが遺伝子の働きであるなら、交配で強力な「+」の性能の遺伝子を育てれば良いことです。人工的な応援方法に頼ると思わぬ副作用が起きてしまうかもしれませんが、伝統的な交配によるなら、自然に逆らうことなく、安全でしょう。

 私の圃場に昨年、ブレーキをかける遺伝子が弱いどころか壊れてしまったのではないかと思われるほど花立ちの良すぎる個体が出現しました。栄養分を蓄える倉庫の少ない在庫を無視しての行動であったために花を咲かせるにいたらず、途中で止まってしまいました。さすがにその株は今年は花を休んでいます。いくら指令が来ても、無い袖は振れないのでしょう。