ストレリチア秘話No.190 ストレリチアが鈍感なのは訳があるのです

 前の章でストレリチアは環境の変化には反応しない、と述べました。言葉を換えれば「鈍感、のんびり、ゆったり」なのです。長日でも、短日でも、暑くても、少々、寒くても、雨が降ろうが降るまいが、そんなことは気にしない、気にしない!

 私は長い間、南アフリカでのストレリチア自生調査を続けてきました。「ストレリチアとは、どんな植物なのか」を知りたかったのです。驚いたのは、私が生まれ育った東アジア モンスーン地帯の温帯の穏やかな、優しい気候とは、まるっきり、かけ離れた厳しい気候風土でした。

 冬の寒さは、私共の所よりは恵まれているとしても、真夏の乾いた炎天は過酷です。気温は40℃を超えて、焼け付くような日光が照りつけます。雨は降らないとなると、1年も、2年も、一滴も落ちてきません。柔らかい草は枯れてしまいますが、根茎に水をためているストレリチアもしなびて、息も絶え絶えの有様で、とても花を咲かせる状態ではありません。

 こんな厳しい条件の中でいきてゆくのですから、細かいことなど一々かまってなどいられません。環境の変化など「我、関せず」となってしまうのは当然のことといえるでしょう。

 こんな厳しい環境を生き抜く術を身につけてきたストレリチアを相手にするのが私の仕事なのですが、時には、理屈では分かっていても感覚がついていけないことも起きてしまいます。でも、しかたないですよね、なにしろ、私は、生まれ育った南房総の穏やかな気候風土が体に刷り込まれてしまっているのですから。