ストレリチア秘話No.210 ストレリチアの生理

 私の仕事はストレリチアの本性を突き止めることにある、と思っています。東アジアの島国に生まれ、育った私が、地の果て、アフリカ最南端に生きる植物に魅せられてしまったのです。同じ地帯であるとはいえ、どうにも理解を越える部分があって、それが栽培の妨げになってしまうのです。これが、そもそもの発端です。

 ストレリチアの年間スケジュールは、夏の成長期に養分を蓄え、冬は開花、休養の消費の季節に分かれます。だから、熱帯に連れてこられ、一年中、休みなく活動させられると調子が狂ってしまうのでしょう。

 自生地、ポートエリザベスの気候図を見ると、降雨は年間に分散しています。アフリカ大陸の大部分が雨季と乾季に、はっきり分かれているのに対し、南部のインド洋沿いの温帯地域は我が国の気候に近いようです。

 私は、南アフリカ東部の亜熱帯地域のウムフォルジーでのストレリチア自生調査をしたことがありました。ここでは寒さの心配はありませんが、ストレリチアは幸せそうには見えませんでした。亜熱帯まで進出したものの、そこは決して楽園ではなかったようなのです。暑すぎる気温、覆い被さる草木など、困る条件が多くあったのです。

 結局、ストレリチアの適地は温帯地だけでした。このことからいえば、我が国、日本は恵まれていると思います。欠点はストレリチアに耐えられない低温に見舞われる事ですが、これだって僅かな程度ですから、手を尽くせば克服できます。世界を見渡しても、ストレリチアに最も適している条件を備えているのはイースト ロンドン一帯だけですが、そこですら旱魃にはお手上げなのです。私たちが日本で栽培に少々、手がかかるくらいは当然のことといってよいでしょう。