ストレリチア秘話No.211 自然を越えて 人の好む ストレリチアの花の色を目指す

 ミツバチや蝶のような昆虫は、白、黄色、ピンクなどの柔らかい色調の花に多くあつまってきます。それに対して、メジロは椿の赤い花に集まります。昆虫は広々とした野原、メジロは見通しの利かない照葉樹林で、それぞれ、目指す花を見つけています。それにしても、必ずしも一つの色にこだわってはいませんが、昆虫と動物では色彩に対しての好みの違いがあるようです。ストレリチアは鳥媒花ですから、サンバードの好みに合わせて進化してきたことでしょう。

 南アフリカの自生地である乾燥草原のブッシュ地帯、広々とした原野に立ってみると、澄み切った乾いた大気の中では、ストレリチアやアロエのオレンジ色の花が目立ちます。鳥と人間では色の感覚は同じとはいえないでしょうが、私たちは人間の感覚で推し量るしかありません。仮に鳥が赤い色が好きだとしても、遠く離れた所ではオレンジ色の方が目立つのです。そこで、まず、遠くからオレンジ色、近づいたら赤色、花に止まったら最終的には花弁の青紫色、ここに甘い蜜が待っている、という趣向なのではないでしょうか。青紫色は緑色の草原の中では、遠くからでは目立たないのです。すぐ近くまできて、やっと分かるのです。

 自然はそこまで配慮して進化してきたのでしょうが、こんどは、私が人間の立場からの好みを生み出そうとしています。それは、赤い色を強調しようとしているのです。私たちが花に対する距離は草原とは違って数メートル以内、離れた距離でも十メートル前後ぐらいでしょう。これなら赤い色が十分に、その魅力を発揮出来る距離です。