ストレリチア秘話No.214 ストレリチア植え替えの適期

 鉢植えのストレリチアは開花株で2~3年で植え替えの時期が巡ってきます。小さな苗は、もっと短期間になりますが、誰でもがやるわけではないでしょう。鉢を抜いて、そのまま根をさわることなく、次の大きな鉢にゆるめるだけなら、根を殆ど傷めることはありませんから、一年中、何時やってもかまいません。しかし、根を切りさばく株分けをするとなると、季節を選ばないと大きな障害を起こしてしまいます。株分けの適期は成長期である5~7月となりますが、安全を考えると5~6月が最適です。少々、無理をするなら、4月、暑さ除けをすれば8月でもなんとかなります。やってはいけないのは「秋」です。

 ストレリチアの根に見える部分は、実は根ではなく「地下茎」であり、「貯蔵根」とも呼ばれる水や養分の貯蔵倉庫です。そこから生えてくる「ヒゲ根」が本来の根なのですが、これが意外ともろく、植え替え時に土と一緒に取れてしまうことが多く、人目に触れることが少ないので気づかない人が多いようです。とはいえ、ヒゲ根は根茎から生えてくるのですから、ここも根の一部分である、といっても間違いとはいえないでしょう。

 「貯蔵根」は植え替えで根が切られ、水が吸えなくなったときに役立つ働きがありますから重宝なのですが、ストレリチアは旱魃時に備えて、普段の必要以上の量を蓄えていますから、バッサリ切り落としても、大した被害ではありません。どのくらいまで?となると、それは経験で覚えるしかないでしょう。

 大事なことは、無くなったヒゲ根を早く生長させて水を吸えるようにすることです。このために手荒いことをするには、根の育つ成長期でなければなりません。これを秋にやれば、根が育つ事が出来ないまま、秋、冬の長い季節を過ごさなければならなくなってしまいます。これでは貯蔵養分だけでは、とても足りず、弱ってしまうことになるのです。これは私たちの災害時と何ら変わりません。備蓄食料は次の対策が働き始めるまでの短期間の間に合わせなのです。いつまでも頼れるほどの量があるわけではありません。ストレリチアは備蓄を持っているだけに他の植物よりは災害に耐えられますが、それにも限度があるのです。

 技術とは、手先で扱うことだけではありません。このような「見極め」があって、はじめて成り立つのです。