ストレリチア秘話No.258 ストレリチアとのスタンスの取り方

 私は子供の頃から、ずっと猫を飼ってきました。その後、番犬として犬を飼うようになりましたが、どうしても猫のようにはゆかなくて困りました。後になって気がついたのです。猫は、お互いが気の向いたときだけの付き合いで良いのに対し、犬は飼い主と朝から晩までいっしょを望みます。毎日、散歩させなくては、と思っても、そこまでは、やってられません。私はつくづくと自分が猫型であることを思い知らされました。

 また、若い頃、バラの栽培に熱中したこともありました。蕾がふくらんできて、もうじき咲く、と思っていたら、明くる朝になってみると、皆、うなだれて、しおれてしまっています。チューレンジ蜂が首に卵を産み付けてしまったのです。梅雨になれば、うどん粉病が発生して、薬剤散布が遅れれば哀れな姿となったりと、秋の終わりまでは気の抜けない毎日で、これも、やっぱり数年しか続きませんでした。とても付き合いきれなかったのです。

 ストレリチアだけは、60年以上も続いていますから、まあ、相性は悪くはなかったのでしょう。それはストレリチアが猫以上に猫型だから、といってもよいからかもしれません。ストレリチア栽培では、毎日のようにやらなければならないことは、何もありません。極端に言えば、思い出したら、やればよい、程度のことが多いのです。だからと言って、きれい、さっぱり、忘れているわけではありません。心の片隅には、いつもストレリチアが存在しています。

「今、どうなっているだろうか、花の色は、もっと濃くなってくれたらなあ・・・・・・」

 などと、テレパシーの交信だけは欠かしてはいないのです。だから、といって、すぐ手をだすような、お節介をするわけでもありません。ほどほどのスタンスで付き合っている、ということなのです。これが正しいか、どうかは分かりません。ただ、長い間、続いたからには、満更、悪くはなかったのでしょう。