自生地巡りの旅では、時には町の中を歩くこともあります。ポートエリザベス セント ジョージ パークのオフィスを訪れると、裏庭で若い女性がフラワーアレンジメントを仕上げている最中でした。使われている花はプロデアが中心です。丸くて、葉もふさふさして使い易いのでしょう。「ストレリチアの花は生け方が難しくてね」といいながらも続けていました。
次は、泊まっているホテルの近く、昔の灯台が残るドンキンリザープへ向かう途中、小さな花屋の店先を通りかかりました。中では店員さんがストレリチアを活けていました。さすが、と思いながら、よく見ると、なんと、紙で作られた造花だったので、あきれてしまいました。ストレリチアの本場ですから、生の花はいくらでもあるでしょうに、とは、こちらの思い込みにすぎないかもしれません。庭園のストレリチアは珍しくないのに、花瓶に活けられたストレリチアの花を見ることは少なかったように思います。花が生けられていなかったわけではありません。思ったほどには使われていなかった、ということなのです。これには、生け方の難易がからんでのことと思っています。
我が国、伝統の生け花でもストレリチアの花はよく使われます。どの作品にも、ストレリチアに対しての並々ならぬ配慮が感じられます。また、私が驚かされるのは、新しいフラワアレンジメントの人たちによるストレリチアの斬新な使い方です、まったく、目を開かされる思いがしてきます。生け花の古くからの流派の教えでは、「花は野にあるように」とされるようですが、アレンジメントの人たちの手にかかると、「宇宙に飛びだした」かのような趣が感じられるのです。この点、ストレリチアの描く直線がビッタリなのでしょう。
ストレリチア、そのものを育てるのが私の仕事なのですが、一方で、思いも及ばない使われ方に接すると、「目から鱗が落ちる」思いがしてきます。