ストレリチア秘話No.349 ストレリチアはパイオニア(開拓者)だったのです!

 私の生涯のテーマは「ストレリチアとは、いったい、どんな植物なのか」を追求することにあります。勿論、そう簡単なことではありませんし、また、結論が単純なものではないことは承知しているつもりです。それが、ここのところへきて、或る一つのストレリチアの側面に気づいたので述べてみたいと思います。

 植物生態学では、「優占種、優先樹種」という言葉が使われます。これは、或る地域の植生の中で最も多い植物を指します。数が一番多いからなのですが、別に「代表種」という名称もあり、こちらは、その植生の性格を表わす植物という意味で、必ずしも数が一番多いとは限りません。私の住んでいる南房総の照葉林は「ヤブツバキ」が代表種なのですが、数は、そう多くは無いのです。勿論、両者が重なる場合もあることでしょう。

 南アフリカの植物解説書で植物の説明に、この「優占種」という言葉が、よく出てきます。

 我が国、日本のように小さく、狭い所で押し合い、へし合いして生きている植生と違って、広すぎる土地のアフリカでは未開地が多く、歴史の変化もあって、安定した状態ではない土地では、植生がまだ完成していないからでしょうか、土地一面に広がって咲いている風景を見るのは珍しいことではありません。

 ストレリチアの自生地すべてが、というわけではありませんが、代表的な自生地、「ブルートの谷」「ユイテンハーグ」ではストレリチアが主役ですし、ナタールの海岸のニコライ自生地に至っては、他の植物は寄せ付けないほどの繁茂ぶりです。ブラック ヒルのジャンセア自生地では、他の植物に遠慮がちな様子が見えましたが、これは後から割り込んだからかもしれません。とにかく、これだけ繁茂出来ているのは、その土地への移住が早く、優占できたのでしょう。環境への適応性を備えていたことは勿論です。

 ストレリチアが故郷を遠く離れても、多少の気候の違いは克服して生きられるのは、このパイオニアとしての生命力があるからなのではないでしょうか。