ストレリチアは原産地の南アフリカ原住民のあいだでは、重要な植物としては認められてはいませんでした。量も少なく、実用上、有用な価値がなかったからです。それが、1775年、ジョセフ バンクスが派遣したフランシス マッソンによってロンドンに紹介され、鑑賞用植物として認められ、その後、世界各地に広がっていきました。つまり、食用にはならないけれど、文明社会では、別な用途に使われるようになったのです。ストレリチアの扱いやすさ、強い性質から、栽培は、ますます、広まっていくでしょうが、それだけではありません。
ある年、ジャンセアの株の注文が殺到してきたのに、手持ちはわずかしかなく、悲鳴を上げたことがありました。様子を聞いてみると、欲しがったのは建築家で、現代建築の庭園ににジャンセアがピッタリ、だから大量に必要なのだ、とのこと。いくら欲しいと言われても、ストレリチアはすぐには応じられません。何年ももかかるのです。そこまでは、とても待ってはくれません。結局、その建築家の発案は実現することはありませんでした。それでも私は、園芸ではない業界からの参入に時代の変化を感じました。
また、先年、或る大学から、ストレリチアの仮種皮の成分の分析をしたいから材料が欲しい、との依頼がありました。その後の研究の結果はわかりませんが、このことから考えると、今までとは違った別な用途が生まれてくるか分からないのです。後ろを向いてだけの評価にこだわってはならないのです。