これはずっと前の話になりますが、中国 浙江省政府の招きでストレリチア栽培の技術指導で杭州市を訪れたことがありました。12月初めで、まだ、本格的な寒さではありませんし、地図で見れば奄美大島と同じ緯度です。海岸地帯といえ、大陸ですから、少々は寒いぐらいだろうと、甘い見通しで出かけたのが大きな間違いでした。着いた途端に驚きました。分厚い氷が張った真冬だったのです。もっと確りした防寒具にすれば良かった、と悔やんだところで、もう間に合いません。おかげで毎日、震えていました。
よく考えてみれば、これは暦どうりの現象で、何ら不思議はないのです。我が国では、季節が暦の表現通りではないことを「暦のうえでは」と表現してきました。これは、さも暦が大げさな表現をしている、との印象をあたえていたのです。実はそうではなく、中国の実態を表していたのです。ところが、その暦を借用した日本は、季節の進行が中国とはずれていたのです。
浙江省が‘「びわ」のふるさと、原産地と聞き、私は思い当たりました。びわは寒さに弱く寒害を受けることが多いのです。花は寒さに強く、12月、1月の寒さには平気なのですが、その後の果実は寒さに弱く、春先に寒波がやってくると凍ってしまう被害を受けるのです。
私は、すぐに原因に思いあたりました。浙江省では、暦の春は本当の春で凍ることはないのです。ここで生まれた「びわ」が、この季節の進行に成長を合わせているのは当然のことでしょう。我が町、富浦の気候には会わせてはもらえないのです。