ストレリチア秘話No.113 植物の流行とストレリチア  その1

 私たち人類は、時々、植物への愛着が過度に進行してしまって、端から見ると、狂気とさえいえそうな状況にまで発展してしまうことがあります。1630年代にオランダで起きたチューリップ騒動は、その良い例です。花を愛する人々から始まった動きが、次第に大きくなり、やがて利益を期待する人たちまで加わって、国中が狂ったような騒ぎに発展してしまったのです。チューリップの球根1個が馬車1台と、それどころか、ビール会社と交換されるなど、バブル経済になってしまったのです。

 ここまで大きな騒動になってしまったのは、植物に対しての愛着を超えて、利益を得ようとする他の条件まで加わってしまったからです。我が国では江戸時代より始まって以来、何度も繰り返し起きてきましたが、オランダほどの騒ぎではなく、純粋に花に、のめりこんだ例が多いようです。20世紀に入ってからも次々に起きてきました。東洋ラン、シュロ竹、観音竹、盆栽、オモト、戦後は、サボテン、サツキ、洋ラン、えびね、と数年おきぐらいにスターが誕生してきていました。

 流行ですから、初めのころは、その植物が好きな人たちだけだったのが、いつか、感染症のように広まって、最初は気乗りしていなかった人たちまで参加してくる大ブームにまで発展してしまうのです。私はその例をいくつもみてきました。  でも、それは流行ですから、そんなには長続きはしません。いつの間にか元の落ち着いた状況に戻ります。そんな熱狂があったことなど、ケロリと忘れ去られてしまうのです。ただ人気が落ちただけのものも、あれば、大量に栽培されたために病気が大発生して、絶滅に近い状況になったものさえあります。