ストレリチア秘話No.117 ストレリチアと共に生きる その3「究極ではない?」

 ストレリチアの栽培には、種子から養成する道があります。これも二つに分かれます。

 一つは気楽にやってしまう道と、育種家が人生をかけてまでの厳しい道のりです。

 草花や植木の種子を採って育てることは、よくやることで珍しくありません。これをストレリチアも同じだろうと気軽にやる人も出てきます。これが間違いの始まりです。ストレリチアの実生は、レギーネでは早ければ5,6年で開花してきますが、近頃、登場してきたジャンセアでは10年、中には15年、20年掛かっても花を見せないものもあるほど、年数が掛かります。これだけ掛けて、結果が今まで通りや、それ以下であっては、折角の苦労が報われません。

 優れた子の誕生には、優秀な遺伝を持つ親株と遺伝の知識が必要なのです。その準備もなく、気軽にやったのでは結果は知れています。ストレリチアを実生から育てようとするからには、まず、「どんな子供の出現を目指すのか」の目標を定めなければなりません。今までと同じものしか生まれないのでは、意味がないのです。

 それには、現状のストレリチアを知り尽くし、それを超えるのは、どんなものかを把握してなければなりません。また、それを果たしてくれるであろう親株を用意しなければなりません。ただし、遺伝子の組み合わせには、必ず成功する保証はありません。

 私は、自分が作出したストレリチアを、「私が生ませた、我が子」のように感じています。

 これは誰でもやれることではないので、ストレリチア栽培の究極ではなくて番外というべきでしょう。