ストレリチア秘話No.241 ストレリチアの歴史と将来 

 明治の初年、我が国の近代化に大きな役割を果たした「岩倉使節団」の一行に参加した田中芳男男爵がイギリスのキューガーデンより持ち帰ったストレリチア レギーネが我が国のストレリチア栽培の始まりとされています。以来、第二次世界大戦が終わるまでの約80年間は、富国強兵の時代の日本は花どころではなく、田中氏の受けた驚きと情熱は伝わることはありませんでした。使節団が持ち帰った西欧の知識 技術は、日本の政治 経済に与えた貢献は高く評価されましたが、田中氏の業績は顧みられることはありませんでした。しかし、現代の私から見れば、何ら遜色のない優れたものであり、我が国、「ストレリチアの祖」とすべき、と考えています。

 以来、150年、やっとストレリチアが世に知られるようになってきた、ところです。しかし、世の中の変化は激しく、人の一生の間に何回も職業を変えなければならないほどの目まぐるしさに追われる時代となっています。さて、その中で、何百年も、ゆったりと生きるストレリチアとどう付き合ってゆけば良いのでしょうか。

 ストレリチアと同じように時代を超えた価値を持ち続けている植物に盆栽の老木、古木があります。どんなに技術が進んだとて、人間は時間を操作することは出来ないでしょう。毎日、忙しく変化する中で、時間を掛けなければ出来ない事柄は貴重な存在になるに違いありません。ストレリチアの生育に時間が掛かるのを欠点としてではなく、長所と考えるべき時代がきているのではないでしょうか。