もう十年以上も前になりますが、南アフリカから、
「ストレリチアの昔からの自生地が次々に消えています。この勢いは止まりそうもありません」
との便りがありました。いつかは、そうなるだろうとは思っていたのですが、意外と早くやってきたのに驚きました。原因は、第一が盗掘で、第二が土地開発です。私が最初に見たのは、コエガ コップのジャンセア自生地でした。ここはポート エリザベスの市街地に近いために、真っ先に掘り採られてしまったのです。私が見たのは、荒れ果てた丘の風景だけでした。これから考えれば、イースト ロンドン郊外 フラーズベイのレギーネ自生地は、もう残ってはいないでしょう。ここも市街地に近く、道路も整っています。海岸の砂丘には歩いて簡単に近寄れます。しかも数は少なく、パラパラと点在しているだけですから、あっとい間になくなってしまいます。ストレリチアの自生は、道ばたの雑草のように群生しているわけではなく、あちらに1株、こちらに1株と数えるほどの数しか存在していないのです。絶滅するのに、そう、手間は掛かりません。
次は土地開発です。南アフリカとて、いつまでも未開の土地が多く残されているわけにはゆきません。道路、宅地、その他が広がってゆくのは避けられません。しかも、そのスピードが驚くほどなのです。こちらは盗掘と違って、大量に、大面積が消えてゆきます。
こう見てくると、自然のままの、自生地に生きるストレリチアは見ることが出来ない時代がやってきているようです。こうなると、私が撮影した写真が「懐かしい風景」となってしまいそうです。ストレリチア自身も原初のものはなくなり、人工的に殖やされたものだけが故郷から遠く離れた地に生きてゆくことになるでしょう。ちょうど、動物園の動物たちと同じように。
「生物とは、生まれ育った環境とは一体のもの」だったはずなのに。なんとも寂しい気分になってきます。でも、これが時の流れというものでしょう。