ストレリチア秘話 No.343平均回帰の流れの中で頑張る育種家

 稲や麦の子供は親そっくりに生まれてきます。これは遺伝が人工的に操作されて「ホモジナイズ」(同一化)されているからです。野菜は「一代雑種」が多く、二代目を自家採種しても、親と同じ性能は発揮できません。一般の植物も親の遺伝が、そのまま子孫に伝わるわけではなく、様々な形質の子供が生まれてきます。

 人類は約一万年前、農業を開始して以来、少しでも良い作物を得ようと、選択育種を続けてきました。初めの頃は自然の中から選び出すだけだったのが、その後、人工的に改良を加えるようになり現在に至っています。そこで、ぶつかった壁が、思うような品種が、そう簡単には生み出せないことでした。長い間、首をひねるだけでしたが、年々、納得出来る知見が現われてきています。

いくら親が優れていても、それが、そのまま伝わらないのは、「そんなことを繰り返していたら、最終的には、この地球上は収拾がつかなくなってしまう。だから子供は、ほどほどの所へ戻ってもらおう」

 これで世の中は平穏無事でいられるのだ、というのが自然の意志である、との考え方です。

これが「平均回帰」と呼ばれています。

 でも、これは短い期間だけをみているのでして、長い目でみると回上してきていることは確かです。つまり、全部が平均回帰するわけではなく、少数ながらも突出したものも生まれてくることを表わしています。ストレリチア育種家としては、いくら良い親同士の交配でも多数が平均回帰の平凡なものであっても不思議はない、わずかな数で良いから自分の望む優秀品種が現われてくれれば、と願っているのです。

 ストレリチア交配の実生苗の性能は正規分布を示します。

1,******~****最高位 5%~10%これこそ育種家が望んだもの

2、***準優秀約 20%この程度なら優良と認められる

3,**普通品 約40%安物扱い(厳しい審査では処分扱い)

4,*やや劣る約20%粗悪品

5、規格外約 10%棄却処分

 これは花を中心とした全体評価です。この数字は交配によっても変動があるでしょう。これを見ると優秀品種が、いかに数少なく、貴重かが分かります。