ストレリチア秘話No.350 ストレリチアと付き合う

ストレリチアは敏感に反応してくれません。鈍感で成長が遅く、何をやっても、すぐには反応してくれないのです。育つ速さは、一番、盛んな夏でも、一日に5m程度で冬には1mm以下しか育ちません。毎日、眺めていても育っているのか、どうか、わからない程なのですが、何ヶ月もすれば、「あ、こんなに育ったのか」と気づくくらいなのです。

 こののんびりとしたストレリチアのペースに違和感がなくなり、合わせられるようになったのは10年ぐらいまえのことだったでしょうか。それもレギーネ相手のことであって、もっと鈍感なジャンセアには、なかなかペースが合わせられず、なじめなかった時代が長くつづきました。

 それが近頃、ようやく、なじめるようになってきたのです。いまでは一番、扱いやすいのがジャンセアとなってしまっています。何しろ、傷つきやすい葉がないために少々、手荒い目にあっても平気なのです。水やりを忘れた乾燥にも、少々の寒さにも、植え替え、株分けの傷害にも耐えてくれるのです。年を取って、キメ細かな作業が面倒になった主にはピッタリの植物なのです。

このようにしてジャンセアも付き合えるようになったのですが、ストレリチアには奥の奥がありまして、まだ、どうしても肌を合わすのが難しいものが残っています。それはストレリチア矮性種なのです。この問題は栽培技術上のことではありません。矮性種とてストレリチアに変わりはありませんから、特別なことは何もなく、普通の栽培でよいことには変わりはないのです。事は、難しくいえば「心理上の距離感」とでもいいましょうか、「何となく、なじめない」ともいいましょうか。とにかく、時間感覚にずれがあって、ピンとこなくて、やきもきさせらることにあります。たとえば花の出方です。矮性種は体が小さく、持っている養分が少ないために、一度、花を咲かせて消耗させてしまうと、その補いに2年も3年も、或いは、それ以上、かかってしまうのです。1年、待つことは誰にも出来ます。

 しかし、それ以上は、どんなに気長な人でも難しいことでしょう。わたしの栽培場のように毎年、開花してくれるストレリチアに混じって「そのうち開花するだろう」と大して期待もしないで栽培を続けることは出来ます。しかし、矮性種だけを相手にするのだったら、私自身、自信はありません。事は人の寿命、100年」とストレリチアは千年との時間感覚の差にあります。

このギャップを、どう埋めたらいいのか、それが出来なくて困っているのです。