ストレリチアの栽培にあたっては、目的も無く、勝手に育つよう、放任しているわけではありません。私にはお手本があり、それは自生のストレリチアの姿なのです。そのイメージを追いかけて育てています。
最初に案内されたのはグラハムスタウンの近郊、「ブルートの谷」でしたが、ここは谷間を隔てた向かい側の急斜面で遠く離れれていて、カメラの超望遠レンズでないと、よく見えません。いくら数が多くても、間接的な観察ではピンときません。
つぎに訪れたのは、イーストロンドンの海岸、フラーズ ベイでした。ここは海岸の砂浜地帯の砂丘で波打ち際まで約 100m、隣の株とは20mも離れて散在しています。海辺の潮風にさらされ、傷だらけになりながらも、たくましく生きていました。いくら何でも、これでは理想の姿とはいえません。
この後、案内されたのが、もう少し北東のクエレノ川の川口でした。この川岸の50m以上もの高さの断崖の斜面に十数株のレギーネの自生がありました。崖が風を防いでくれるのでしょう、葉も傷つくことも無く、強い日光を浴びて締まった姿を見せてくれています。
私は、ここにストレリチアの理想の姿を見た思いがしたのです。ここの系統は花の美しい株が多く、改良種の★★★★★星以上に相当するのもあるほどです。辺り一帯は見渡す限り広々とした川口風景で、ここでは、ストレリチアが主役となっています。
近頃、次々とストレリチア自生地が消えているとのことですが、ここは、まだ、残っているのではないかと思われます。それというのは、この自生地の断崖の上を、川口のリゾート地への道路が通じているのですが、なにせ、断崖の下ですから、道路からは見えません。それに川岸の崖では開発の見込みはなさそうです。ただ一つ、心配なのは盗掘です。岩陰や急斜面にありますから、普通なら、とても近づけない場所ですが、命知らずだったら、やりかねません。
私なら、典型的で美しい自生地を挙げよ、と言われれば、文句無く、ここを推奨します。
いつまでも残ってもらいたい自生地なのです。