「その一つに原種の魅力があります」
ストレリチア栽培で最も重視されることは、その品種がどれだけの価値があるかを決定する基準を定める事にあるでしょう。バラでもカーネーションでも草花や植木であっても、新しい品種が出てくれば、それがどれだけの価値があるのか決定を迫られます。しかも、その評価は、その時だけで決まるわけでもありません。長い時間を掛けた歴史によることまでが関わってくるのです。この点ではストレリチアも何ら変わりは在りません。私のような育種家は常時、これに迫られているのです。
勿論、決定に当っては、それぞれの時代の要求が基準として示されます。しかも、大抵は人工の規準に従うことが多いのですが、私のようにストレリチアの場合は一部分を原種に頼る方法を採用しています。原種が示す特徴は自然が生みだしたものであって人の手に掛かったものではないからです。
私にしては、ストレリチアが人工ではいつも人の意欲に左右されますが、時には人の及ばない分野も手がけてみたいからです。
私が持っている原種はレギーネ黄色種のゴールドAとマンデラスゴールド、ジャンセアではユイテンハーグであり、準原種ではセットラーズパークです。それぞれが人工作品では出来ませんから大勢のものには及ばない個性の持ち主で、この発展を狙ってのことなのです。勿論、人工の改良も同時に進めてはいます。交配、作出に当っては出来れば遠く離れた遺伝が望まれるからでもあります。でも、これらがおすすめするのは交配時の見込みであって、実際の効果は実現してみないとわかりません。
ストレリチアを愛好する人は、色々な品種をコレクションするのが普通です。その集め方にも、その人らしさがが現われるのは当然ですが、私としては、一部分に原種を加えることをおすすめします。原種は自然が生み出したもので人の手が加わっていない良さがあるからです。
趣味であれ、切り花が本業であれ、ストレリチアに関わる人であれば、高度な関わりが求められます。ストレリチアそのものが望んでいることに応えられなければ一人前では無いことを知って欲しいのです。その点では、昔はお粗末でも過ぎたようですが、近年となると深い学習がないと通用しない時代となってきたようです。



