ストレリチア秘話No.422 一年草と貯水装置を持つ多年草との戦略の違い

 11月も半ばを過ぎ、秋が深まり、気温が下がって来ますとストレリチアの鉢は急に乾きが遅くなり、水やり回数が減って作業が楽になります。ストレリチアが水を吸う量が減ったためです。もう成長期ではありませんから、その為の水の必要量が減って生命維持だけの量があれば事足ります。あとは、花を咲かせるのに水が必要ですが、これぐらいは貯蔵根に貯めてある水で十分で、この装置は生長休止期間に働いてもらうためにあるといってもよいでしょう。

一年草では、こうはいきません。短い期間にすべてを完了しなくてはなりませんから、自前の製置を用意する余裕はありません。活動条件すべてが環境によりかからなければならないのです。例えば、開花時期に雨がなければ花は咲くことが出来ないので、人工の灌水で補います。ところがストレリチアは違います。雨が降ろうが降るまいが、外からの条体に振り回されることはなく、自前ですべて完結してしまいます。花を咲かそうと水をかけるなど、見当違いもはなはだしいことです。ストレリチアに水をやったら開花が早まるだろうと考えるのは、その人の独断、偏見で、行動は気休めに過ぎません。無駄なことなのです。一年草は環境の変化が大きな影響を及ぼしますから、このコントロールが栽培技術の大きな部分を占めます。ところがストレリチアは違うのです。

 だからといって、この季節、全然、水をやらなくてよいといっているわけではありません。そんな極端なことではなく、やはり、常識に従えば良いのです。ストレリチアという植物の本質を知らないと間違いを犯してしまいますよ、ということを述べているに過ぎません。