ストレリチア秘話No.670 歴史的名花という基準もあるのです!

 名花と呼ばれる優秀品種でも、すべてが一様であるわけではありません。ここではストレリチアの歴史を語る上で、どうしても書くことが避けられない一つの品種を紹介することにしましょう。

 ストレリチアの故郷、南アフリカでも有名な品種は1カ所に集中して置かれているわけではありません。それぞれが自生地から集められた歴史上の場所とも言うべき所へおかれていますから、すべてを見ようとすると、何カ所も回らねば、実物に出会うことが出来ません。

 私から見ると最高のストレリチアの一つとも言うべき品種がジャンセアの自生地を近くに控えたポートエリザベス市のセットラーズパークに植えられています。正確な記録は残っていませんが、自生の量から見て、多分、ユイテンハーグ産と思われ、私は、ストレリチアジャンセアユイテンハーグと名付けました。セットラーズパークでは各所にストレリチアが植えられていますが、余り、大勢の人にはふれない場所に隠れるようにジャンセアの優秀品種が植えられています。

 その中でのトップレベルとして植えられていました。ジャンセアの黄色原種も植えられていましたが、やはり、トップはこれでしょう。自生地から選ばれて運ばれてきたのでしょう。勿論、原種です。

 私は株分けしてもらって日本へ持ち帰ったのですが、栽培してみて、その優れた性能に驚きました。株高は標準ですが、柄は緑色が濃く、硬く締まった姿は、ジャンセアの代表とも言うべきものでした。ジャンセアなのに花立ちに優れ、毎年キチンと年末に開花し、苞の色は紫がかった紅色で、ただ一つ惜しまれるのは、花首が伸びず、赤く染まらないことですが、これはユイテンハーグ系の特徴で、ストレリチアでは、よくある系統ですから、必ずしも欠点とはいえないでしょう。交配親としても使いましたが、相手のせいか親に似た苗は3株しか生まれていません。最近になってジャンセアゴールドカノープスとの交配も試していますので、どんな結果が出るか楽しみです。

 原種ですから人工的に殖やすことは出来ませんから、株分けするしかなく、貴重な品種です。どうしても持っていたい品種ですが入手は簡単ではありません。

 私としては無数にあるストレリチアの中で、一つだけ選べといわれたら、この品種とします。これこそ、ストレリチアの中のストレリチアだと思っているからです。二番目は、といわれたら、レギーネのマンデラスゴールドに決まっています。あらゆる点で共通しています。勿論、原種であることも含めて。