ストレリチア秘話No.498 ストレリチアの堅実な生き方

 冬のストレリチアは、まったく、じっとしたまま、動きをみせてくれません。花芽だけは少しは生長しているでしょうが、それでも、一日あたりでは、まるっきり育っているようには見えない鈍さです。

 この季節は、ストレリチアにとって無駄な時間なのでしょうか。いえいえ、そうではありなせん。ストレリチアの生長サイクルにとって必要な時期でもあるのです。暖かい季節は、駆け足で生長を続けているので、その場では整理しきれなかったことが残ってしまいます。

 それを冬に、ゆっくりと補っているのです。言葉を換えれば、最後の仕上げをする充実の季節ともいえましょう。

 亜熱帯や熱帯に植えられたストレリチアが病気にかかりやすいは、病原菌が発生しやすい環境のせいばかりではなく、ストレリチア、自身が弱くなっていて、負けてしまうからです。一年中、暖かく、育ち続け、休んで、充実する暇がないせいです。ストレリチアの生き方は、基本的には頑固なのですが、部分的には環境の変化も受け入れます。その変化が好ましくないことだってあるのです。それが困った事態を引き起こしても、対応する術をもっていませんから、やられてしまいます。想定を越えた出来事に遭遇してしまったからです。

 基本的な性格には、驚くほど、将来を見通した戦略もあります。その一つが開花時期の分散です。ストレリチアの開花期は長いのですが、一つの株が全部をカバーするのではなく、早咲きから遅咲きまでを分散して担当しています。開花は結実につながりますから、種子の稔りは、幅広く分散します。種子の発芽に必要な雨は、気まぐれです。それを見越して、雨の降り方がずれても、種子のどれかは出会うことが期待出来るわけです。

 このように基本的なレベルの行動は意味深いもであるのに対し、あとから人工的に起こした変化の中にはストレリチアも望んでいない困ったものもあります。この両者を混同するわけにはいきません。