ストレリチア秘話No.233 ストレリチア種子が食用に?

 私が南アフリカ滞在時に読んだストレリチアの解説記事に

「原住民は昔、ストレリチア種子を食用にした」

との解説がありました。ストレリチアの種子は、小豆や大豆と同じで、割ってみると中に澱粉質の胚乳がつまっています。これが発芽時の苗の養分となるのです。

 人類は昔から豆や穀物を粉に挽いて食べてきました。この石臼で引く作業は、今ではもう、見られないでしょうが、つい、何十年か前までは、やっていたことは確かで、私は観光施設で原住民の暮らしの実演で見たことがありました。真ん中が凹んだ石臼上の大きな石の上にモロコシやトウモロコシの実をのせ、こぶし大の石ですり潰して粉にするのです。この粉に水を加えて、練って、ゆでた「おかゆ」を観光客に試供していました。ヨーロッパからの観光客は気味悪がって誰も手を出しません。そこへ、ただ一人、好奇心あふれる日本人の私だけが手を出しました。皿もスプーンも木で作られた素朴なもので、中には灰色がかった白っぽい、やや、固めの「おかゆ」が盛られていました。薄い塩味の素朴な味で、おいしいとはいえないまでも、まあ、まあの味でした。例えてみれば、ホテルの朝食に出てくる「オート ミール」によく似たものです。

 ストレリチア種子の「おかゆ」は試したことはありませんが、味に大きな違いがあるとは思えません。困るのは、食用にするだけの種子を集めるのは大変な手数がかかることです。ここまでしてストレリチア種子を食用にするのは「飢饉」の時ぐらいだったのではないでしょうか。

 植物の生存戦略の一つに、種子を動物に運んでもらうことがあります。人間だって、知らず、知らずの間に一役買っていることもあり得ます。食べるために処理しているうちに、こぼれ落ちることなど、いくらでもあることでしょう。パテンシーからユイテンハーグまでの70㎞、途中には1本のジャンセアも存在しません。親木からこぼれ落ちた種子が次々に広がる程度では、到達するには不可能な距離です。一気に渡ったのです。現在の住民のバンツー系のコサ族は、たかだか千年位、その前のコイ・サン族でも数千年前から程度ですが、先史時代の人類だって住んでいたはずです。これがストレリチアに関係がなかったとは言い切れません。