ストレリチア秘話No.248 曰くつき(エピソード)で「名花」となる

 刀剣には数多くの名刀があります。例えば「童子切安綱」。平安時代、世を乱していた「酒吞童子」の首を源頼光が切り落とした刀とされ、「国宝」に指定されています。名刀とは、それが優れた作だけではなく、人々に印象強く訴えるエピソードを持っていなければならないようです。世の名品と呼ばれるものは、すべてがそうなのです。

 ストレリチアだって同じです。例えば「マンデラス ゴールド」です。初の黒人大統領マンデラ氏になぞらえた命名です。しかも、その名に恥じない名品です。私の所では数多くの「ゴールド クレスト」を生み出した交配親でもあります。「パーヴィフォリア セットラーズ パーク」は私の命名ですが、自家受粉では、どうしても種子が出来ない黄色原種がサンバードによって運ばれたレギーネの花粉によって初めて種子が出来た、その生まれた場所の名前です。

 これは、あまり知られていないことですが、東京の小石川植物園にあるレギーネは、明治初年、田中男爵が導入した、日本第一号のストレリチアです、品質は別として、これは立派な物語でしょう。もっと小さきことでもいいのです。「これは、我が家代々、伝わってきたストレリチアです」と。家族内だけでも共有できる価値がありましょう。このようにエピソードだけでも「名花」の仲間入りは出来るのですが、それに加えて実質の価値が加われば「名実」ともに名品となります。

 人の世とは不思議なもので、そのものの価値だけではなく、ドラマがあると、それが付加価値となって評価されるのです。