ストレリチア秘話No.272 ストレリチア 切り花価格の推移

 戦後の混乱が収まり、経済成長が始りかけた頃です。 ハワイからストレリチアの切り花が東京に空輸されてきて、 1本が500円で取引され、大きな話題となりました。 サラリーマンの初任給が1万円足らずの時代ですから、 現在の貨幣価値では1本が1万円に相当します。 勿論、ここで言うのは市場価格であって小売値ではありません。これは日本では初めてのストレリチアの切り花で、 どこで使われたかは分かりませんが、 一般の人々は手にすることはおろか、見ることさえ出来なかったのです。この出来事が後のストレリチア躍進の元となったといえるかもしれません。やがて数年後には国産の切り花が少しずつ出回り始めましたが、それでも300円を超え、今なら1000円ぐらいに相当する値段です。使うことが出来たのは生け花の大先生クラスであって、弟子達は遠くから見るだけで、手を触れることは出来ず、勿論、一般の人には手の届かない 「高嶺の花」の時代が続きました。

 その後、大量消費の時代がやってきて、切り花農家も多くなり、切り花価格はわずかに下がった程度でも、貨幣価値が下がってきているので求めやすくなってきているのが現状です。それでも小売り価格では安い花とはいえないでしょう。

 少々、困るのは、昔は、花の品質によって価格に大きな開きをつけたものですが、 大量消費の時代になると、値段も品質も平準化してしまっていることです。これでは、高価でもいいから質の高い花を必要とする人は、なかなか手に入らなくなって困ってしまいます。 どうもストレリチアは二極化してきているようです。どこでも手に入る、ごく普通のストレリチアを使う人と、厳しい基準を突破した優秀品を身近にする人に。