ストレリチア秘話No.305 新品種ジャンセアゴールド「カノープス」命名のいわれ

 私は新しく作出した「ジャンセアゴールド」の中の優秀品に「カノープス」と命名しました。これは、この星が有名だからではありません。ストレリチアがアフリカの神秘を内に秘めているとすれば、この星の名はビックリだと思ったからなのです。

 古代ギリシャの物語、ホメロスの書いた「イリウス オデッセウス」では、卜ロイ戦争が終わってギリンャへ帰る途中、スパルタ王メネラーオスの船の水先案内人カノープスは、妃のヘレネーを乗せた船が暴風のため難破してしまい、やっとのことでエジプトに辿り着きました。そこへ「カノープス」と呼ばれる町を建設したのですが、やがて水没してしまいました。現在は地中海の海の底です。

 その後、大航海時代、南半球に進出した船乗り達が、ひときわ、光り輝く星を「カノープス」と名づけて航海の頼りとするようになりました。カノープスは竜骨座のa星、シリウスに次いで二番目に明るい星です。南半球の星なので北半球の房総半島では二月上句の10日間ぐらいしか見ることが出来ません。それも水平線すれすれにです。その後、この星についての物語が次々に誕生しましたが、ここでは省略します。私が感銘を受けたのは、ただ一つ、南アプリカ北部に住むソト族の占い師が語ったのをライアル ワトソンが書き留めたことです。

「星は先祖達の目だよ。星がたくさん出ていると未亡人は眠れない。眠らないで夫を見上げていたいのだ。その中でも一番重要なのが角<ナカ>なのだ。(カノープスのこと)これは慎重に観察するものだ。乾きの季節<冬>の初めに、この星は現われる。この星を最初に見つけて村長に知らせた者は村長から贈り物をもらう。私が若い頃には、それは子牛だったり、かなりの贈りもだった。ナカ(カノープス)は古い年の終わりと新しい年の始まりを示すからね。ナカが出た翌日に、わたしたち占い師は全員、広場に集合して、新年が何をもたらすのかを占うのだよ」

 ストレリチアと,この星とは直接の関係はありません。ソト族の真摯な思い、アフリカのマインドがストレリチアにも共通するのではないか、との思いが命名の動機なのです。占い師ラセべが、育ててきた弟子が一人前になったことを披露する儀式の場で村人達を前に誇らしげに叫びます。

「ブルルルルル・・・・。聞けえ!わたしが子を産んだ,見よ!・・・」と私が作出したカノープスは株の性能だけが優れているのではありません。交配親として多くの優れた子係を生んでくれるであろうことを期持しているからなのです。