ストレリチア秘話No.316 ジャンセアゴールド誕生の道すじをたどるその1

ストレリチア無茎種は、長い間、オレンジ色の花しか無いと思われていました。それが近年、黄色花が存在することが知られ、交配、改良が行われるようになりました。私が作出した「ゴールドクレスト」が最初で、今も主力ですが、ジャンセアは取り残されたままでした。それは、私が南アフリカから持ち帰った親株が枯れてしまい、手がかりを失ってしまったのが原因です。

その後、ようやく2001年に持ち帰った苗によって育種が始まり、やっと「ジャンセア黄色種」を生み出すことに成功したのです。まだ、一般には知られていませんが、やがては大きな潮流となることは間違いないと思われます。その頃になれば、この種が生まれた経過を確かめたいとの動きが起きるでしょうから、ここに、その記録を残します。

但し、少々、専門的になりますがご容赦下さい。

・原種

ポートエリザベスのセットラーズ パークに植えられていて、ジャンセア黄色種としては、この一株しかありません。しかも不稔性(自家不和合性)で、自家受粉では種子が出来ないので苗で増殖することが出来ませんでした。レギーネは親株が数種あったので、この点、問題はなかったのですが、ジャンセアは「ひとりぼっち」だったために開発が遅れてしまったのです。

・「不稔性について」

 ストレリチアにも不稔性の株を時々、見かけます。原種や、それに遅い系統は少ないようですが、交配代数が進んできたり、或いは、特別な形質を持った株に多くみられるようです。特に「ジャンセアゴールド」は多いようです。この品種すべてでは無く、一部分のことです。これは元になる先祖の黄色原種が、この遺伝を持っていたのですから不思議はありません。これには2種類あります。

(1)花粉が生成されない花(2)雌しべ、柱頭が初めから黒く枯死しているもの、・・・です。この現象は、種子の生産を阻害するものであって、鑑賞には大きな障害とはなりません。

 私が最高のストレリチアと評価する「ジャンセアゴールドカノープス」は、有り難いことに雌しべも、花粉も健全で、この悪い遺伝を引き継がなかったことに感謝しています。(もっと厳密にいうと、優性である表現型としては受け継いでいないが、劣性としての遺伝型としては分からない、ということです)

・一代雑種 セットラーズパーク(パーヴィフォリア)

 この名は誕生地を表わしています。私に苗を譲ってくれた人は、自家受粉で出来た種子で「黄色」は間違いない、と思っていたようですが、私は、片親(花粉親)はオレンジ色しかないのだから、「こどもは優性のオレンジ花に違いない。しかし、遺伝の半分は黄色であるなら、後からの手段はあるはずだ」との思いで入手したのです。

 帰国後、数年で開花してきましたが、やっぱり、オレンジ花でした。しかも草型が「小さい葉のパーヴィフォリア」だったので、花粉親はレギーネのオレンジ花と判明しました。

 サンバードが仲立ちしたに違いありません。ところが、花色以外は、私の期待以上の形質を持っていたので驚きました。苞の紅色は最高とはいえないまでも美しく、花立ちは断然、多かったのです。