ストレリチア秘話No.354 ストレリチアの発芽に乾燥は禁物

 前章につづいてストレリチアは生理上の必要を越えてまで水分を欲しがる事の続きです。

 それは種子の発芽時にも起こります。種子を播いて発芽を待つ間は極端な乾燥を避けるべきなことについてです。

 ストレリチアの種子は十分な降雨があったことを確認しなければ発芽しようとしません。

 乾燥地帯で生きてゆくには当然、身についた事柄です。だから、発芽途中で乾燥の気配を感じたら、すぐに行動を停止してしまいます。後から雨がやってきて補いをつけてくれることなど期待出来ない地域の産なのです。とは言っても、ずーっと湿らせっぱなしでは腐らせる菌が発生してしまいます。この、ほどほどの乾湿の繰り返しが腕の見せ所なのです。

 だからといってストレリチア種子が発芽にそれほどの水を必要としているわけではありません。事は心理上の欲求であって生理上の必要からではないと思えるのです。

 「雨は十分に降ったよ。だから、安心して発芽活動をはじめていいんだよ」と、知らせなければならないのです。乾燥地帯に生まれ育った植物は、われわれ日本人には考えられないほど、早魃の被害におびえて生きてきことを思い知らされます。私は30年前、南アフリカにて80年に一度という早感に出会ったことがあります。何年もの間、一粒の雨も降らないのです。その厳しさを人間ばかりか植物だって当然、身にしみて心得ているわけなのです。

 2023年6月、私は実験を試みました。貴重なジャンセア ゴールド種子でしたが2カ所に分けて養成しました。発芽処理までは同じで、播種後の養成から環境条件を変えたのです。

 本園のほうは順調な発芽を示したのにたいし、分園のほうはサラリーマン生活のために目が行き届かず、水やりが途絶えがちだったのでしょう、結果は不成績で大きな差となって表われてしまいました。

 このように差は歴然と表われるものなのです。