私達は植物の栽培技術を見つけるのに苦労を重ねます。大抵が試行錯誤の果てに発見してゆくのですが、それだけでは不足です。その技術の、よってきたる背景となる理論が、どうしても必要で、これがなければ安心できないのです。
私達の身の廻りにある温帯の植物は楽に理解できるので問題ありませんが、乾燥地帯の植物となると肌合いが違ってピンとこなくなるのです。極端に乾燥が進んだ砂漠となると、あまりにも違いすぎるので理解ができるのですが、一歩手前の乾燥地帯は、中間であるので、つい、誤解が生じてしまいます。例えば、砂漠地帯の植物のようにカラカラに乾燥させてしまったり、或いは逆に温帯植物と同じに水をやってしまったり、のようにです。
乾燥地帯は湿潤な時代が続いた後に出現してきたらしいので、その後、ここへ雨に恵まれた地域からの植物が進化し、移り住んでいったことでしょう。引き続き同じ場所に止まった植物もあったことでしょうが、とにかく、いままでよりも少ない水でも耐えられるよう体を造り変え、また、生き方も乾湿の極端な変化に耐えられるようになっていったにに違いありません。でも、私には、それは表面上のことであって、内部には、水が十分に得られた先祖の時代の気分がまだ残っていて、普段は耐えているだけのことではないかと思われるのです。
ストレリチアは乾燥に強いので、それに合わせた栽培をするのは間違いではありません。
でも、成長期の夏は、十分な水を与えた方が育ちがいいのです。その後、生長が緩やかになり、あるいは停止した冬は乾燥状態で十分過ごすことが出来るでしょう。つまり、ストレリチアは、成長期の夏は先祖と同じ条件で、冬は本来の生き方に戻る、二段構えを望んでいるのではないでしょうか。言葉を変えれば、
「ストレリチアは乾燥に強いのは我慢しているからであって、内心は水を渇望しているのではないでしょうか。だから、人工栽培で水を多くやってやれば、喜んで反応してくれるのです。但し、夏の成長期だけのことですが」
極端に進化した砂漠の植物は、もう、ふっきれた形質になってしまって、水をあきらめてしまっているのでしょうが、乾燥地帯、半砂漠地帯の多肉植物は、まだ中途半端な存在であるように見えるのです。
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