ストレリチア秘話No.369 ジャンセアは明日の植物か?

 私のストレリチア遍歴はレギーネから始まりましたが、現在では一番、好きなのはジャンセアなのです。あの丈夫な体、まとまりのよい草型、寒さに耐える根性、酷い乾燥にもビクともしないで生きられる強さ、現代建築に、良く映えるデザイン性。まさに宇宙時代にぴったりの植物だと思っています。

しかし、大勢のお客さんを相手にする私の経験では、このジャンセアに対する印象は、私のひとりよがりなのではないか?と思わせられることが、しばしば、起きてきます。これは私のひがみかもしれないのですが、どうも一般には好まれていない、といえば言い過ぎで、少なくとも、「違和感」を感じている人が多いように思えるのです。なじめない、といっても良いかもしれません。原因は、「植物」として、「有るべきはずの葉がない」ことにあるようです。

 「植物とは、宇宙時代いうものだ」という固定観念に捕らわれていれば、こう感じることも仕方ないことでしょう。でも、進化には、目的など無く、あらゆる方向に向かって進みます。

 時には、我々の固まった感覚では理解出来ないことだって起きても不思議はないでしょう。

 ジャンセアは思いつきで葉を捨てたわけではありません。極端に乾燥した地域で生きるために、水分の蒸散を減らすために葉を持たない姿に進化したのです。これは優れた適応だと思っています。

 わたしたちは、初めてのものや見慣れないものには、すぐには近寄らない習性があります。

 世の中の流行が物語っています。異端から始まって、やがては、それが常識となってゆくのです。何事も最初はなじめないものです。ストレリチアも小さい葉のパーヴィフォリアは、違和感が少ないために、近頃では、なじみが出てきているようですが、ジャンセアは、もう少々、年数がかかることでしょう。

 私がジャンセアに親しみを感じるのは、皆さんより早く出会い、付き合う時間が長かったからなのです。必ずしも、先に長所を見つけたからではありません。ジャンセアの価値が分かったのは、栽培を始めて10年以上もたってからのことですから、威張れたものではありません。