ストレリチア秘話No.374 花の栄枯盛衰とストレリチア

 花にも流行があり、はやり、すたれは避けられません。一世を風靡し、猫も子も飛びついて、我が世の春を歌った植物も、流行が去れば、誰も見向きもしなくなり、うち捨てられてゆくのが、この世の習いです。いったい、どうして、こんなことが起きるのか、原因は何、なのか?未だに分かっていないのが現状です。これさえ分かれば手の施しようはあるのに、と、なんとも情けない気分を抱えています。

 私は長い間、観光花摘み園でストレリチアの手伝いをしていました。その時、一番、困ったのは、お客さんから、

 「いつ、来てもストレリチアの花はパラパラしかないの。満開を見たかったのに」と、いわれることでした。お客は、他の花、同様、満開の賑やかさを期待してくるのです。

 ところがストレリチアは派手なパフォーマンスなどできようもありません。それでも、咲かせっぱなしなら、ともかく、咲けば切り花にして販売してしまうのですから、常時、咲いているのは、大した数ではありません。ストレリチアの花は、静かな舞で、孤高の美しさを秘めているもので、決して、派手にはしゃいで、人々を熱狂させることなど出来ません。

 これでは、流行のスターにはなれないでしょう。私は、これで良いと思っています。例え、流行の波に乗っても、「米枯盛衰」は必ず、やってきますから、後の没落が怖いのです。

 ストレリチアの花は、鳥の姿に似せた独特のもので、他に例はありません。この特殊な個性で花の世界の一角を細々と生きてゆけば良いと思っています。花の咲き方も特別です。真夏の2ヵ月は休みますが、この季節、暑くて、人々は花どころではありませんから、なんら差し支えはありません。後は一年中、花が途絶えることがありません。季節によって多少があるとは言え、こんな重宝な花は、そうそう、ないのです。