ストレリチア秘話No.378 ストレリチア「慣れる」ことの恐ろしさ!

 ストレリチアの栽培は、大きくは二つに分ける事が出来ます。一は切り花向けの大量栽培で、二は少量の趣味栽培」です。両者共に、スタート時はストレリチアに魅入られて始まりますが、途中から、目的の違いから分かれていきます。私は両方の経験のある「こうもり」みたいな存在ですが、それだけに両者が、良く分かります。

 切り花栽培は、営利が目的ですから、初めのころはストレリチアに対して思いやりがあっても、やがては、お金を稼ぐ手段としか見なくなってゆきます。こうなると人とストレリチアの関係は機械的で、情感は消えてしまいます。企業経営としては当然のことですが、相手が生き物である、動物や作物では、ここまで割り切ると、思わぬ「しっぺ返し」が起きかねません。特にストレリチアのような永年作物は、植物と人間は長い付き合いとなりますから、神経が摩耗して注意を払わないようになりがちです。ところが、この世の中、変化もなく進行することなどあり得ないのです。結果として、世の流れからはずれて低迷を辿ることになってしまうのです。

 私に言わせれば、ストレリチアは一度植えたら、いつまでも、そのまま、なんてとんでもない。毎年、手を入れて、常時、新しい状態を保つべきなのです。それでも、沖縄のように近くに大勢、集まっていれば情報交換が出来て刺激し会うことが出来ます。しかし、本土の栽培者は孤立していることが多いのです。自分から進んで情報を求めない限り、どこからも刺激はやってきません。これは現代の情報社会では恐ろしいといえるはどの環境です。しかも相手は、私に言わせれば、人の神経を摩耗させる強力な魔法を持ったストレリチアです。

 残念ながら、わたしは、この例を数多く見てきました。

 趣味栽培では、楽しみが目的ですから、このようなことは起こりにくいのですが、それだって安心できません。新しい情報が全然はいってこないような環境にいれば、楽しみ、そのものが怪しくなってしまうからです。やっぱり、ここでも「赤の女王」が、にらみを利かせています。「お前は、何と、のろまな国に生きているのじゃ」と。