ストレリチア秘話No.395 ストレリチア品種の命名とその内側

今まで私は、この問題にふれるのを避けてきました。それは微妙に難しく、私の手には負えないと思っていたからです。しかし、ここのところへ来て、考えを改めました。例え、難しくても、関わっている以上、避けて通るわけにはいかないと。そこで私なりの見解を表わすことにしました。従って、以下は、あくまでも私個人の見解です。

植物学上の名称は、国際命名規約で決められていますから、問題はないようですが、それだって、裁判所のような機関で決定されるわけではありません。論文が機関誌に発表され、それに対して反対がなければ、そして、それを受け入れる人が多くなれば、いつにまにか認められることになる。となっています。つまり、公式見解になるまでは長い時間がかかるのです。いつのまにか、気がついたら、それが常識になっていた、という状況で、キーワードは「いつのまにか」であって人はっきりしたものではないのです。

これが園芸となると、規制のある規約などはありませんから、尚更、あいまいになってきます。それでも、人気のある、注目されている花は協会が結成され、命名を登録する。規制をもつ事も起きますが、それだって、一部の花にとどまり、しかも国内だけで、国際的な活動にまでは至っていません。

 さて、ストレリチアですが、あまりにも小さい世界で、まだ未熟ですから、何の組織もできていません。従って、私が命名した「オレンジプリンス」も「ゴールド クレスト」も、私が勝手に付けたものであって、何の保証もない、私的なものに過ぎません。だからといって、他に方法があるわけではありませんから、いつのまにか流通してしまっています。

 遠慮して、数字やアルファベットで表わすことことも考えられますが、これらは、あくまでも記号であって、意味をもっていませんから、無味乾燥なのです。だからといって、なんでも構わず命名すればよいというもではありません。仮に協会が出来て登録するとなれば、その品種の特性や親株の来歴の記述が求められるでしょう。それらの基準に達していることが求められるのです。いまのところは、しかたなく、これを自分でやっているのです。

現在の私は、「カノープス」や「スカーレット」を命名していますが、決して、安易な思いつきではなく、その花、本来の形質にふさわしい名前を、と考えています。それだけに選ぶ基準は厳しいのです。その基準とは、「ストレリチアの歴史に残る名花になるであろう」なのです。これは「あだ、おろそかなことではすまされない」との気構えでやっています。