ストレリチア秘話No.426 ストレリチアの1年

 ストレリチアの一年は大きく二つに分かれます。一は夏を中心とする成長期で、二は冬の休止期です。ストレリチアは休眠しませんので、完全に活動を停止することはなく、僅かな活動で春を待ちます。亜熱帯では生長期間が長くなりますから、それだけ生長が早くなりますが、冬の最高温度が開花適温に達しないとか、腐敗病が多く発生したりで、困ることも多いようです。熱帯では一年を通じて生長することが出来るので理想的に思われますが、実は開花期が狂うなど、思わぬ障害が表われますのでストレリチアは嫌がり、適地とするわけにはいきません。やはり、夏と冬、成長期と休止期が交代でやってくる温帯、正確には暖温帯が最も適しています。我が国は温帯地域が多いので、まずまずの適地といえましょう。それでも自生地の気候、そっくりではないので、少し、手を加えなくてはなりません。一番の違いは冬の日中の最高温度です。私はストレリチア自生地を7回訪れていますが、季節は現地の冬と春に集中しています。ストレリチアの花が一番多く見られるからです。朝晩は0°C近くまで下がり、セーターが必要になりますが、日中は暖かくなり、20°Cから25°Cまで上がり、快適な気温となります。ここが普通の温帯と違うところなのです。日本は海に囲まれていますから温度の上下の変化がすくないのですが、大陸は砂漠性の気候で気温の上下の差が激しいのです。強いて日本の温帯で自生地と同じ条件にするには、ハウス栽培です。これなら、好天の日中は軽く25°Cに上げることが出来ます。

 朝晩の冷え込みは凍らない程度の保温で十分です。

 と、ここまでは分かっているのですが、私の所では、台風で温室が被害を受けて以来、凍らない程度の自然栽培ですから、日中の温度を上げることが出来ません。そこで、20°Cは無理でも15°Cだったら暖かさが巡ってくるのを待てば、何とか花を見るようにしています。それには時間が掛けて待たなければならないのですが、栽培量を多くすれば、どれかが咲いてくれます。

 ストレリチアは、いつも高温を望んでいるわけではありません。或る程度の寒さは障害ではありません。必要なのだと知れば「目から鱗(うろこ)が落ちる」ことでしょう。