ストレリチア秘話No.444 「夜目、遠目、傘の内」はストレリチアにもあります

 このことわざは江戸時代に生まれたのでしょうか。この3条件の中では女性は美人に見える、つまり、実態とは違っている、ということらしいのです。TVで見た美しいタレントさんを実際に会ってみたら、肌荒れ、その他の細かい欠点がみえ、やっぱり、生身(なまみ)の人間だった。ということと同じ、らしいのです。

私がストレリチア栽培場の入り口に立って眺めていると、今まで見たことのないような真っ赤な苞のストレリチアの花があるではありませんか。私が驚いて、駆け寄ってみると、それほどではない、花でした。狐につままれた感じ、とでもいいましょうか。

 それ以来、何回も同じ経験をしましたので、いまでは、遠目では、細かい欠点はかくれ、美点が強調されるのだ、と納得しています。

 南アフリカのストレリチア自生地巡りをしていた頃のことです。夕方、帰ってみるとホテルの前にあるドンキンリザーブ(公園)に植えられているジャンセアの花が見えました。

 驚いたのは赤く輝いていたのです。ジャンセアの花のオレンジ色はレギーネよりは濃いのですが、それでも、「赤い」といえるほどの花は見たことがありません。私は、あわてて駆け寄りました。そこで、がっくり!何のことはありません。普通のジャンセアの花に違いなかったのです。考えてみると、夕焼けの色を受けて赤いにみえただけ、しかも、遠くからだと強調されていたのです。

 ポート エリザベスはジャンセアの自生地を近くに控えているために、公共用地にはストレリチア、わけてもジャンセアが多く植えられています。南アフリカは花の国ですから、国中、至る所に花が植えられていますが、よく見ると手の掛からない多年草が多いようです。それに引き換え、我が国では一年草の草花の花理が多いようです。かかる労力の点で大きな違いがあるのに不思議でなりません。