ストレリチア秘話No.463 ストレリチア サバイバル

南アフリカ自生地でも盗掘の被害があります。しかし、それには酌量すべき背景もあるのです。我が国で、捨てられ同様の扱いを受けているストレリチアとは、姿は似ていても内容には違いがあります。自然では、種子が地面に落ちてから、一人前になるまでに厳しい環境からの試練を受けます。それをくぐり抜けた株だけが生き残るのです。

いってみれば、原種とは「自然のテスト」の合格者なのです。私は自生地の原種を数多く見てきましたが、「これはひどいな」と思った株に出会ったことはありません。それに引き換え、人工で繁殖されたストレリチアは、人に守られた栽培を受けているのですから、テストで陶汰されることなど、まず、ありません。その中から、優秀花が選抜されることはありますが、選に漏れれた残りも、そう、ひどい扱いをされることもなく生き残っているのが現状です。つまり、人が関わってきたので、ゆるく、甘い待遇なのです。

 生物の世界では、生まれてくる子がすべて健全であることなどありません。私は数多くのストレリチアの苗を育ててきましたが、大抵は1年生の段階で、少なくとも5%ぐらいは「これは正常ではないな」と捨て去り、その後も、選抜が毎年、続きます。私にとっては「苗の養成とは、選抜の連続である」といってもいいような作業です。工業製品の製造過程で不良品のチェックが行われるように、生物の世界も同様なのです。ところが、植物の分野では、あいまいで、はっきりしない部分もあるのが困ります。

 ストレリチアは自家受粉を嫌います。結果として性能が劣化するからです。しかし、このことは意外と知られていないので、生産が後を絶ちません。それに比べれば、原種は、まだしも優れているのです。盗んででも欲しくなってしまうのでしょう。私から見れば、まあまあのレベルなのですが。何はともあれ、ストレリチアを手に入れるには、「素性を確かめる」ことが必要といえるでしょう。