ストレリチア秘話No.476 ストレリチアの進む道

以前の章にて、改良の進んだストレリチアの品種は、原生だった自生地へ戻したら生きてゆけないだろうと述べました。

 この章は、その続きです。私たちは、石器時代から、早くも植物を自分たちに都合のいいように手を加え始めました。種子が飛び散らないこと、早い斉一な発芽、植物体の大型化、味や花の美しさの向上、などなどと数え上げれば次々と出てきます。でも、それらの形質は、自然条下では必ずしも有利でないどころか、生き延びることを難しくしてしまう変化です。結果として、栽培植物は人間の保護下でなければ生きられないことになってしまいました。それが現代に至って、ますます加速してきています。

植物の品種改良、育種の面で大きな発展に寄与したのが「一代雑種」の登場です。優秀性(多収、良質)、均質性、永続性(両親の保存が必要)の3点が揃っているのです。「雑種強勢」は早くから知られていましたが、一代雑種は特に優れています。ストレリチアは純系を育てるのに、あまりにも年数がかかるために、まだ、実現していません。また、一代雑種は大量生産向きなので、少ない需要のストレリチアに適用するには問題があります。せいぜい、雑種強勢を強化するぐらいでも、と考えています。

 「育種は人間の意志によって方向けられた進化である」といわれます。これは現われた遺伝質が選抜されて固定型となって伝わってゆくものです。ここまでは人がやれても、それが生き残れるのは自然の許容範囲以内に限られます。新しいストレリチアが次々と生まれ出ても、全部が生き残れるとは限らないのです。この兼ね合いの中で新品種を生み出さなくてはなりません。育種家は、実に難しい仕事を任されたものです。