ストレリチア秘話No.477 ジャンセアの自生 優占種と代表種

私はストレリチアの中でもジャンセアが一番好きです。それは、どの種よりも変わった、独特の形質を持っているからです。それなのに情報量がわずかしかありません。だから、ジャンセアに関する情報なら、なんでも知りたいのです。例え、それが、どんな小さい事柄でも記録に残しておこうと思っています。

ジャンセアの自生地は2カ所しか残っていませんでした。それさえも現在では怪しくなってきています。最大で、中心ともいえるユイテンハーグでさえ、開発で消えてしまっているかもしれないのです。私が最初に訪れたのは40年も前ですが、その時、案内してくれたセントジョージ パーク園長のシェルトン氏が、「ユイテンハーグは気候、風土が農業に向いているから、これか開発されるでしょう」と言ったことを思い出したのです。緩やかに傾斜した原野の中をポートエリザベスからユイテンハーグの小さな町へ通じる道路で、幹線ではなくとも、不便とはいえない感じでした。その途中の道の両側にジャンセアが自生していたのです。今では、ブルトーザーで開拓されて、見渡す限り、小麦畑になってしまっているかもしれません。何しろ、交通の便利さは文句無い地域でしたから。

 そのユイテンハーグ自生地の植生は殆どジャンセアで占められていました。したがってジャンセアはその地域の「優占種」であり、その上、そこの植生を代表する代表種」でもあったのです。ジャンセアは、みな特大株で、周囲の植物を寄せ付けない堂々とした存在で、自生地の古い歴史を示していました。

 2年後、次に訪れたのは、近くのブラックヒルでした。そこはユイテンハーグ自生地とは明らかに違っていました。ここではジャンセアは優占種と呼べるほどの数ではなく。

 ブッシュの中、他の木や草と並ぶ存在でした。それでも、まあ、代表種といってもよいでしょう。ジャンセアも大株はなく、壮年期を思わせる姿でした。ストレリチアにどうして、こんな違いが起きるのでしょう。正確なことは分かりませんが私の見解では、「ユイテンハーグでは、ジャンセアは開拓者で自由に振る舞えた結果が優占種となったのでしょう」

 「ブラックヒルでは、後からの移住者としての存在です。そこには先住者がすでに到着していたから勝手に振る舞うことはできなかったのです」

 ジャンセアが若く見えたとはいえ、それは百年単位のことではなく、移住は万、数十万年以上も前のことでしょう。周囲の風景、植生は悠久の時の流れを感じさせてくれる雰囲気でした。