ストレリチア秘話No.482 冬のストレリチアの花を楽しむ

 ストレリチアの花の特徴は長い期間、楽しませてくれることです。わけても冬は、飽きるほど長く咲き続けます。切り花でさえ、1ヶ月近く保ちます。実は、もっと長く咲かせるだけの蕾を内包しているのですが、養分の補給がないために途中で息が切れてしまうのです。

 この点、鉢植えでは(地植えも)生まれた蕾を全部咲かせられますから、冬は3ヶ月近くも咲いています。一個の花は1週間から10日程度でも、後が、次々に追いかけてくるからです。

 これが苞の美しい優秀花ともなると、花芽が顔をのぞかせ始めた秋から、すでに紅色を見せますから、開花が終わるまでは半年近くも楽しませてくれます。開花した花ばかりではなく、それ以前の蕾の段階から、すでに鑑賞が始まるのです。

 ところで、ストレリチアは部位によって生長のしかたに違いがあります。葉は冬になると生長休止状態になりますが、花芽は低温の季節になっても、ペースは落ちても生長を続けます。冬でも開花しなければならないからです。ところが、それも開花直前までのことでした。

ハウス裁培のころは真冬での開花は当然のこととして何の疑問もなかったのに、自然栽培では、開花が停まって困る事態となったのです。ハウス内の環境では、例え、凍る寒さの冬でも、晴天の日中は開花適温の二五度近くまで上がりますから、楽に開花します。それが当然だと思い続けてきたことからの驚きです。花芽の成長時までと違って、開花には、もうー押しの温度が必要なのに、真冬の自然では無理で、結局、大部分の花が春まで待たなければならない状況となっているのです。時には、これを掻い潜って開花すこともありますが、数は多くありません。

 無理矢理、苞を開いて調べてみると、驚くことに花弁が青紫色に色づいています。普通、開花前は、まだ白いのです。これはもう、開花の準備が出来ているのに、開花が待たされているのを表わしています。このようにしても耐えられず、息絶えてしまうことも珍しくありません。この危難を潜り抜けたものだけが春を迎えることが出来るのです。

 せっかち人間の私には、この変化の少ない毎日が苦痛の連続です。それが最近になって。

 「それだからこそ、この苞の美しさの変化を長く見ていられるのだ」と思うようになりました。でも、美しい、とはいえない品種の苞では、そう強い感じは受けません。やはり、気に入った優秀花には特別の価値があると思っています。