現代、ストレリチアの最新の系統といえば「ジャンセアゴールド」でしょう。でも、いきなり、生まれ出たわけではありません。それは、長いとまではいえないまでも、ストレリチアが辿ってきた道の延長線の上にあるのです。
1, 初期の頃、ストレリチアが、まだ、珍しかった時代ストレリチアの本格的な栽培が始まったのは1960年代からですから、数えてみると60年以上は経過しています。でも、それくらいの長さでは、花としては、若く、新しい仲間といえるでしょう。この初期のストレリチアは、もちろん、オレンジ色花だけで、改良と言えるほどの手は加えられてはいませんでしたから、花も素朴で、草姿は荒々しいものでした。車で言えば、クラシックカーとはいえないまでも年代物に相当します。
現代でも、まだ、働いているものもありますが、さすがに、見劣りすることは避けられません。現代の品種に比べれば、花立ちが悪く、生産性が低かったのですが、珍しさのために情状酌量されていました。しかし、時代は進みます。これからは淘汰されてゆくのは避けられないでしょう。
2,オレンジプリンスの登場
ゴールドクレスト作出の前段階として、今までのオレンジ花に黄種の遺伝が加えられた品種が出来ました。オレンジと黄色の交配では、オレンジが優性ですから、生まれた子はオレンジ色です。ところが、この品種は、今までのオレンジ系にはない優れた形質を持っていました。花が美しく、花立ちも多かったのです。草姿も優しく、スッキリしています。これが知れ渡ると、またたくまに全国に栽培が広まってゆきました。特に沖縄では栽培の 多くを占めるほどの発展ぶりです。本土では、情報伝達が不徹底なので、まだ、古い品種が残っていますが、全体の割合からみれば、主力はオレンジプリンスといってよいでしょう。我が国のストレリチア切り花が高水準なのは、この品種のおかげといってもよいのです。私は数えきれないほどの苗を養成しましたが、「ザ キング」は、他を寄せ付けない貫禄を示しています。その他、全国に送られた苗の中にも多数の名花が存在しているはずです。
3,黄色種、ゴールド、クレストの誕生
ストレリチア切り花栽培の増加が頭打ちとなり、代って趣味栽培が多くなってきた時代の境目にあたるころ、ストレリチアの花に今までなかった色、黄色花が誕生しました。
このゴールド、クレストを熱狂的に支えてくれたのは、趣味栽培の人々でした。そろそろ、栽培意欲が低下してきていた農家に代ったのです。このためでしょう、今でも切り花では、黄色花は多くありません。「黄色種は趣味家の花」といってもよいほどなのです。
栽培家は全国に散在し、それぞれが、孤立していますから情報伝達が遅れ、従って、未だにゴールドクレストの要望が絶えません。その上、この品種は変化が多く、名花に事欠きません。対象が幅広く、深いのです。頂上を極めるまでは大変なことですから、この趣味の熱狂は、まだまだ、これからも続くことでしょう。