ストレリチア秘話No.515 ストレリチアの謎のひとつ 「種子の運び手は誰?」

 ストレリチアの自生分布図を見る度に首を捻ります。自生地が繋がって連続しているのだったら何の不思議もありません。でも、ジャンセアではパテンシーからユイテンハーグまでは数十Km、レギーネでは、イーストロンドンからウムフォロジーまでは千Km以上も離れていて、その間には全然、ないのです。植物は大地に根を張って動けません。移動するには種子に頼るしかありません。では、一体、ストレリチアの種子を運んだのは誰だったのでしょう?これが未だに謎なのです。

 私は、以前、アリではないか、との説を述べたことがありました。ストレリチアの種子には、オレンジ色をした短い毛の房(植物学では仮種皮とよんでいます)がついています。

 これが甘いので、アリが餌として運ぶのだろう、これなら、現在より高い位置に移動することも可能である、ということでした。これは現在でも大きな間違いとは思っていませんが、説明しきれない部分が残るのです。アリでは、せいぜい、数メートル位の距離しか運べません。これを何万年も続けたら長距離の移動は可能かも知れませんが、それだけでは、途中にはないことの説明が出来ません。もう一つ。仮種皮は種子の、ほんの一部分で、重要なのは澱粉がつまった球形部分ですから、これこそが重要な働きをしなければならないのではないかという疑問です。といっても、この種子を喜んで食べてくれる鳥や動物が見当たらないのです。昔は、いたんだけれど、今は絶えてしまった?でも、せっかくの食べ物を利用しないなんてことあるのでしょうか。不思議です。私たちが知らないことが、まだ、あるのではないでしょうか。

 現在は、まだ、お手上げ状態ですが、一つだけ思いついたことがあります。

 それは、この離れた自生地の間には低い平野があるので、ことによると、例え、ストレリチアがあったとしても、大洪水で流されてしまったこともありうる、ということです。

 それにしても、こんなことまで考えるなんて、ご苦労様なことです。いや、それは、ストレリチアに関することだったら、なんでも知りたがる物好きだからですよ。