私のような育種家にとっては重大な問題なのですが一般の人にとっても無関係ではありません。メンデルの法則はエンドウ豆が対象でしたから、基本的にはともかく、細部についてはストレリチアは、少々、ずれた反応を示します。
4つの法則に分れますが、第一の優劣の法則については現われる割合が違うだけですから大した問題ではありません。困るのは第3の独立の法則なのです。この法則では、花の,実の大きさ、重さは、それぞれ、独立して変化する、とありますが、これがストレリチアでは必ずしも独立でなく、同時に、或いは抱き合わせで、くっついて現われる点なのです。
ことはジャンセアゴールド育成の第一期の時に起きました。交配親のパーヴィフォリアセットラーズパークは黄色第一代で、花はオレンジでも遺伝の半分は黄色を持っています。その子供達の中から黄色を選び出そうとしていたときです。私の目指すのは、黄色花で葉は典型的な無葉でした。ところが、無葉の株は全部、オレンジなのです。例外はありません。メンデルの法則に従うなら、別々に変化して現われるはずなのに、そうはなりませんでした。黄色花は小さくても葉のある株だけにしか現われませんでした。そこで私は仕方なく、自家受粉で採取した方に切り替えたのです。ストレリチアの遺伝は難解なのです。バラバラに現われるなら数を多くすることで対応できます。しかし、抱き合わせで、くっついてしまっていては、どうすることも出来ません。結局、他の方法を探るしかないのです。
このことは学術的には、(十数本ある)染色体の内の一本に同居しているから離れられないのだ、との見方があるのですが、だからといって私たちに、どうこう出来ることではありません。
優秀品種の価格が高いのは、わけがあります。一品種生み出すために、背後に数多くの犠牲があり、その分まで背負わなければならないからなのです。